【FILM】-陶芸と純金泥- 原清和陶苑 金箔・金粉の通販は至善堂 – Shizendo

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環境や素材と対話し優しさを奏でるものづくり

着物のような高貴さと心がほっこりする温かさが共生する魅力的なお皿たち。

 陶芸作家の原稔さん・依子さんご夫妻は自然豊かな京都府宇治市炭山陶芸村にて工房を構えています。

作品は展示会でも数分で売り切れてしまうほどの大人気。

大掛かりな宣伝もなくインスタグラム上で発信するうちに、いつの間にか多くの人の心を魅了したようです。そんなお二人のものづくりの魅力の源を探りました。

境遇に導かれたご夫婦の創作スタイル

原清和陶苑では基本的にご主人の稔さんが造形、奥さまの依子さんが絵付けを担当。陶芸作家になるべくして出会ったかのようなご夫婦ですが、現在のスタイルになったのは予想外の出来事でした。
稔さんは初代・お父様から陶苑を受け継ぎ、高校卒業後に陶芸の専門学校に通いました。文字通り「道に入られた」稔さん。ろくろ上で粘土を変幻自在、あっという間に造形していきます。

 

一方で会社勤めをしていた奥様の依子さんは子育ての最中に絵付けを始めました。

息子・快斗さんは重い自閉症を持って生まれ、依子さんは職場復帰を断念。快斗さんの保育園通いを機に、稔さんより一年間絵付けの専門学校に通うことを提案されました。

これは当時造形のみだった工房に簡単な絵付けをできる人がいれば可能性が広がるのでは…との考えがあったそう。
こうして、依子さんの0からのモノづくり道が始まったのです。

 常識や伝統から解放された独自の発想源

息子さんといる時間が長く、他の陶芸作家さんの展覧会に行く機会がなかった依子さん。しかしお皿と筆を手に取ると、日々の滞りが解き放たれるかの如く次々とデザインが湧いてきたそうです。

今ではその環境をも強みと捉え、お家では着物生地、海外の雑誌やお庭の植物など陶器以外の素材を見て過ごすことが多いとのこと。

まるで他の文明との関わりのない離島が独自の豊かな生態系を育むように、依子さんは自分だけのアイデアの泉に水を湛えているのです。

「一つの目標を追求する生き方もカッコいいけれど、私は運命に導かれた環境に向き合い、受け入れて来たから今があるのかも。」と朗らかに笑う依子さん。

 

欠かせない「脇役」としての金泥

陶芸における金彩には「金液」「金泥」を始め、多様な手法があります。
「金液」は化学的に生成された釉薬の一種で、焼き付けると一貫してまぶしいほどの光沢を放つことが特徴です。
一方「金泥」は金箔を粉状に加工したもので、粒子の細かさや使用時に配合する膠液の量によって透け感や擦れ感を調整することができます。
「金泥はどんな色も優しく引き立てて作品全体のバランスを取ってくれるの」

金属素材である金泥は他の材料との異質感から作品の主役/ワンポイントとして扱う作家さんも多いですが、お二人の作品中では色とりどりの絵付けや陶器の質感と見事に調和して謙虚な輝きを放っています。

 

伝統的な小紋柄を取り入れつつもポップで親しみやすい作風。

 

モノづくりと材料

原清和陶苑では顔料をはじめとするいくつかの材料について、単一の供給元に頼らず多様な素材を組み合わせる「自家配合」を実践されています。

これは材料の提供元や素材の質が突如変わってしまい、作品に甚大な影響を被った経験から生み出された苦肉の策。リスクを分散することで、一部が変わってもまた素材と配合を模索し、理想の材料軸を維持・向上を可能にしています。

可能性を広げ合う

造形の稔さんと絵付けの依子さん。手探りで築いてこられたモノづくりは単なる流れ作業ではありません。

「お互いの専門分野をよく知らないからこそ無茶なリクエストも出し合える」

固定概念や気遣いからくる忖度や妥協なしに、互いの可能性を未踏の地に引き出す深い信頼関係が伺えます。

もともと造形一本だった稔さんも、依子さんの影響で金泥を使った着色を始められました。

         

陶器素材の織り成す凹凸と金泥−両者の美しさが一層引き立てられています。

お二人の作品の源は、時にはきれいごとでは片づけられないような苦労も原動力にする家族の絆にあるようです。

「食卓で明るい会話を生まれるようなお皿になることを願って」日々作品を生み出しておられます。