『Kiyomizu ware exhibition-色絵と手業の清水焼展-』によせて②工房探訪/株式会社陶葊
独自開発の絵の具で植物の美しさを表現
住宅街の小道を抜けると見えてくる立派な門構え。迫力ある「陶葊(とうあん)」の看板を横目に進むと工房が見えてきます。
ここでは成形から絵付けまで、京焼のすべての工程をこなしています。
最初に訪れた1階は成形した陶器を焼く場所。電気窯が整然と並べられ、そこで黙々と窯入れ作業が行われていました。

大正11年からつづく「陶葊」では現在、成形や絵付けで約20名の職人がいて、一般的に手に取りやすい作品、商品をつくられています。


工房内はそれぞれの工程ごとにフロアが分かれています。
たくさんの完成前の作品が並んでおり、その量に圧倒されます。乾燥中のもの、絵付け前のもの、これから電気窯に入るものなど様々です。特筆すべきは機械による大量生産に見えてすべて手作業というところです。
この青い作品は絵付けではなく釉薬で花のような結晶柄を表現したもの。陶葊独自の釉薬だそうです。


いよいよ絵付けのフロアに入ります。
技法は昔からのものをベースにしながら、現代のスタイルに合わせて制作。
効率化できる部分、従来の方法を守る部分、良いところを取り合いながら生産をされています。
数ある工程のなかでも絵付けは商品に付加価値をつける大切な工程です。一人で一つの作品を下絵から上絵まで一貫して絵付けします。

「陶葊」は植物、特に花柄を得意としていて描かれた植物たちはいきいきとしています。
その秘訣は自社開発のオリジナルの絵の具。発色の良さ、美しいグラデーションが印象的です。その上から輪郭を縁取るように金で描かれています。
色彩を引き立たせる金のあしらいに日本人ならではの感性を感じます。

お話を伺った土渕さんは清水焼の魅力をこう語ってくださいました。
「清水焼は決まった形式、材料がない。様々なスタイルが許され、新しいことに挑戦できることが魅力。」
老舗で経営の信条とされる「伝統は革新の連続」という言葉。脈々と続くモノづくりの場でも同じです。
※京焼と清水焼
「京焼」は茶道流行を背景に、江戸時代初期頃から東山山麓地域を中心につくられた焼き物のこと。
「清水焼」は、清水寺の参道である五条坂で作られていた焼き物のこと。
京都のなかでも微妙に産地が分かれていたようです。現在は区別されていません。
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『Kiyomizu ware exhibition-色絵と手業の清水焼展-』によせて①京焼・清水焼とは
『Kiyomizu ware exhibition-色絵と手業の清水焼展-』によせて③工房探訪/小野多美枝(雅号:空女)