縁付と断切の話
純金箔には「縁付(えんづけ)」と「断切(たちきり)」の2種類があります。製法の違いからこの分け方がされていますが、質感・作品になった時の仕上がり・扱う時の感触も異なります。また工程の違いと専門性の高さから職人も縁付箔の職人・断切箔の職人がそれぞれ技を継承しています。
見た目の違い
左が縁付。打ち紙に使用した和紙の目が特徴です。断切りに比べると和紙目の風合いのためか、しっとりした厳かな輝きに感じられます。
箔押しの仕上がりは下地や接着剤、作家の技量に大きく左右されますが、同じ条件であれば紙に箔押しをした時にしっとりと抑えた光沢になるのが縁付、煌びやかに光るのが断切です。
製法としては縁付が元々あるもので、世界的に知られる「風神雷神図屏風」(建仁寺蔵)「八橋図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)などの金屏風の日本的な金色にはこちらが使われています。文化財の保存の観点からこれら著名作の複製が作られる時も縁付が用いられます。
製法について
純金箔はいずれも上澄みを叩き伸ばして作られますが、一言で言い表すなら「縁付」は長く積み上げられてきた手仕事の箔、「断切」は工程を工業化した量産性に優れた箔です。
縁付箔
手漉きの雁皮紙を灰汁や柿渋に漬けて仕込みんだ箔打紙に挟み延ばされ、竹製の道具を用い一枚づつ規定の大きさに裁断します。その後、箔合紙上に重ねられます。合紙の寸法が箔より一回り大きく額縁のように見えることから「縁付」と呼ばれています。
この方法は400年以上前から用いられています。複雑ないくつかの工程を経て作られますが、それはまた別の機会にお話しします。
断切箔
1970年代ごろから行われている製法で、グラシン紙によってうち延ばされ、合紙と交互にに1000枚単位で重ねて一気に裁断を行います。断切という名前もこの工程から取られています。
どちらを選びますか?
断切箔は安価で手に取りやすく、より多くの人に純金箔の魅力を知ってもらうために欠かせない箔です。今では断切箔が主流となり、生産効率の面からも縁付箔の職人の後継者は減少の一途を辿っています。縁付箔は製造時の手仕事の多さ・複雑さから作り手の後継者不足の問題があり、至善堂でも「工芸を繋いでいく」「日本の材料の美しさを伝える」ということの重要性から縁付箔の魅力を広く発信いきたいと思っています。
性質や質感の違から選ばれても良いですし、習作には断切の箔・作品展などの出展作には縁付などの使い分けをするのもおすすめです。