『古梅園の金巻墨展』によせて ①油煙墨と金巻墨について
至善堂の実店舗で開催される企画展。
第二回は奈良、古梅園さんの「金巻墨」をご紹介します。
展示に先立って工房に訪問し、墨の製法や金箔と関係のある「金巻墨」についてお話を伺いました。
Magazineでは「①油煙墨と金巻墨について」「②製造へのこだわりと工房の様子について」2つの記事にわたって墨の魅力をお伝えします。
油煙墨とは
『油煙墨(ゆえんぼく)』とは、純植物性油を燃やすことによってできる「煤」が原料で、膠(にかわ)や香料を混ぜて固められたものを指します。
油煙墨の製法を見ていきましょう。
【採煙】いぐさでつくられた「灯芯」に火をともし、おおいの蓋に付着した煤を集めていきます。
【配合・練り】煤は膠や香料と一緒に全体重を使い、しっかりと練り合わされます。
【型入れ】練り込まれた墨は梨の木型に収められ、強くプレスされます。この工程で文字や図象の凹凸が表面につきます。木型は江戸時代からのものあり、修復などもしながら現代も使用されています。
【乾燥】木型から取り出した墨は非常に長い時間をかけて乾燥させます。墨の芯から全体的に乾燥させるため、「木灰」と呼ばれるクヌギの木の灰に埋めてゆっくりと乾燥させます。この工程で墨全体の約7割の水分がなくなります。
残りの3割は自然乾燥となります。その後は更に半製品のまま5年ほど土蔵倉に保管し、完成させます。
【磨き】蛤の貝殻で墨の表面を鏡面のように美しく磨き上げます。
【彩色仕上げ】金粉や銀粉、顔料を用いて墨を鮮やかに仕上げます。
製法や材料が変わることにより、完成する墨の特徴を変えることができます。
金巻墨とは
その名の通り金箔が巻かれている墨で、美しく装飾し、墨そのものを保護することを目的としています。金箔が巻かれているからといって、墨をすって描く際、金が見えたりはしません。墨色をしており、雁皮紙や鳥の子紙に描くときに優れた墨です。
中国から伝わった当初、墨は丸く作られ実用性が重視されていました。時代を経て、絵柄の浮き上がった墨を愛でたり、墨に彫られた文字を見て心を穏やかにしたりと、墨自体を楽しむようになっていきます。
1/10000ミリの金箔は、墨の表面に凹凸で表現された文字や絵柄の細い線まで完璧に浮かび上がらせることができるため、美しい商品に仕上がります。
金巻墨は価値や見た目が高価なため、上質品の区別として使われたり献上品としても扱われたそうです。
金巻墨はまずその華やかさに目を奪われますが、実用的な効果や装飾性
などさまざまな魅力を秘めています。
続く後編②では工房の様子をレポートします。
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株式会社 古梅園
創業:1577年
本店所在地:奈良県奈良市椿井町7番地