『古梅園の金巻墨展』によせて ②奈良の墨工房を訪ねて
「古梅園の金巻墨展」の取材記事。前編の「油煙墨と金巻墨」に続いて後編は工房探訪の様子をお届けします。
創業1577年(室町末期)墨が初めて伝わったとされる奈良の地で伝統技法を守りながら447年、墨一筋に努められています。
にぎやかな商店街をぬけた先、少し歩いていくと見えてくるのは歴史ある店構え。暖簾をくぐり、うなぎの寝床のように細長く続く通路を抜けると工程ごとに建てられた工房があります。地面には台車のレールが奥まで続いています。
渋墨塗りの木造の壁やしめ縄のかかった軒先、しんと静まりかえった工房の前では、墨を足でこねる力強い音だけが響き渡り、まるでタイムスリップしたかのような気分になります。
製造へのこだわり
「昔のやり方を守っていく、それが古梅園なんです」
発展しつづける現代で、できるだけ昔と同じ環境、材料、工程で作り続けることを大切にされています。
例えば、墨をつるして乾燥させる部屋は昔と変わらず木造で障子戸。土蔵づくりになっているため、自然に湿度管理が出来るということです。この環境の中で今も昔も変わらない最高の墨を作ることが出来るのです。
墨づくりの道具も江戸時代から使い続けているものも多く、修理を加えながら大切に使います。
社員の方が「見学の方を案内するたびに昔ながらの墨づくりを続けていることに誇りを感じる」と仰っていました。社員一人一人に墨づくりに込められる古梅園精神が浸透している証だと感じました。
墨づくりの現場では、若手の職人さんへの技の伝達も大切な仕事です。古来からの製法を守り伝えることは容易なことではありません。
「昔のやりかたを守る」ことを根幹に据え、実現される古梅園さんへの尊敬の念を新たにしました。
墨の中に悠久の時が閉じ込められており、書や絵となって人の目にふれる。金箔にも共通する墨の一生。知るほどに引き込まれる墨の世界をどうぞお楽しみください。
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株式会社 古梅園
創業:1577年
本店所在地:奈良県奈良市椿井町7番地