蒔絵における金属粉の材料と技法
蒔絵とは?
蒔絵は漆工芸の技法の一つで、奈良時代が起源とされています。平安時代以降、貴族や武士の調度品・仏具などに用いられ、町人・商人文化を経て日本独自の発展をとげた伝統的な装飾技法です。
一般には金銀粉地や色粉を蒔き付けたもので、螺鈿を組み合わせたものなどもその範疇に入ります。
現在もお椀をはじめとする工芸品や仏具・節句人形の小物などに施されており、私たちにとって身近な伝統工芸の一つなのではないでしょうか。
粒子の大きさ、形状の違いを使い分け、遠近や陰影を表現できる。
蒔絵は漆で絵や模様を描き、上から金粉を蒔いて硬化させ、研いだり磨いたりするものですが、金粉の種類や技法により様々な描き分けがなされています。
どのような金属粉・技法が使われているのでしょうか。実際に見てみましょう。
平蒔絵
平目粉・丸粉を蒔いたもの。金泥は金箔からつくられ粒子が細かいのに対して丸粉は純金からの削り出しのため粒子自体が丸く厚みがあり、金泥に比べ光沢が感じられます。
梨子地
梨子地は平目粉をさらに薄くしたもので形は同一。透明な梨子地漆を何度も塗り重ね、下の粉が見えるように作ります。※参考写真では一部腐食あり
平目地・高蒔絵
平目地は平目粉を蒔いて研ぎ出したもの。高蒔絵は消粉や丸粉を用い、模様に厚みを出したいときの技法です。
平文
金属の板金を文様に切抜き、漆面に貼ったもの。
消し粉蒔絵
表面の接着剤(漆)に金泥を蒔いて金属色を出します。仏壇などに使用されています。
写真は複数の方法や材料を使い組み合わせて複雑で繊細な絵を表現した研ぎ出し蒔絵による作品です。
このように複数の方法や材料を使い組み合わせて複雑で繊細な絵を表現していることがわかります。
奥深い蒔絵の世界を金属粉という材料に絞り簡単にご紹介しました。
ここに挙げた金属粉を作る職人も昨今の担い手不足を受けて減少しています。日本の伝統工芸「Maki-e」として世界中から愛されている蒔絵。その技法を継承するためにも主要材料でもある金粉・金泥の存続が必須です。仏壇や着物などの産業が衰退する現在、地道にアーティストや工芸家が作りつづける他に存続の方法はありません。皆様の作品づくりにも是非ご使用いただきたいと願います。