日本家屋に浮き上がる黄金の円ー金箔と現代アート 金箔・金粉の通販は至善堂 – Shizendo

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落ち着いた和室にくっきりと浮き上がる金の円。
CGで合成されたものでしょうか?


SHODOSHIMA 2018 ©GEORGE ROUSSE

こちらは瀬戸内国際芸術祭2019の公式作品の一つで、フランスの現代アーティスト兼写真家ジョルジュ・ルース氏の残した「インスタレーション(空間の芸術)」です。

ルース氏は世界各地にある取り壊される予定の建物に赴き多数の写真作品を残されています。
彼はまず撮影現場の一か所にカメラを固定し、このような幾何学模様が現れるようにファインダーを通して目印を打っていきます。そうして出来上がったインスタレーションを写真作品として残すのです。

この画像はCGではなく、ルース氏と同じ位置から彼のインスタレーションを撮影したものです。

小豆島にあるこちらのギャラリーを訪れると、オーナーの石井純氏が作品について、作者のルース氏について温かく丁寧に教えてくださいました。
この古民家にはかつて石井氏のおじいさま・おばあさまが住んでおられたそうです。

石井氏は1995年に起こった阪神・淡路大震災の記憶を残すため、ルース氏を招き、半壊した建物内で作品を撮影する「阪神アートプロジェクト」を発案・牽引されました。
その後も両氏は交友を深められ、2018年に「小豆島アートプロジェクト」としてこの古民家を拠点に新たに三つの作品が残されました。

小豆島の三作品を除き、ルース氏の撮影現場は全て取り壊されているそう。
ルース氏の作り出した空間を実際に五感で楽しめるのは世界中で小豆島だけということです。

 

作品作りの経緯

ルース氏の作品はあくまで「写真」。

 

 

確かに、制作現場では彼がカメラを置いたという点から1°でもずれると完璧な円には見えません。
どの角度から見ても新たな発見があり何時間でも楽しめる空間です。

よく見ると吊るし電球の紐にまで箔押しが。

お判りいただけますでしょうか…
一方でカメラの位置から見えない床の間の側面などには箔が貼られていません。
邪魔だからと取り除いてしまうのではなく元々の空間に敬意を払い、その全てを作品に取り込む。
しかし材料の無駄遣いはしない。ルース氏の精神が感じられます。

素材と美的感覚~「異」の触れ合いが生み出す新たな美

「和室は質素なもの」という日本人の常識を良い意味で打ち破り、豪奢の象徴である金箔を大胆に取り入れたルース氏。
瀬戸内の温かな陽が差す静かな和室と黄金の輝き。性質の異なる両者それぞれの美しさが引き立てられ、凛とした、しかし落ち着きの感じられる、調和のとれた空間です。

この作品のほかにも、古民家の屋根裏には下地に小豆島名産の醤油、枠取りにチョークを用いて正方形が浮き上がる作品があります。


SHODOSHIMA 2018 ©GEORGE ROUSSE

また、古民家から徒歩五分程度の場所にある、石井氏の従兄さんの納屋には銅箔を用いて円が浮き上がる作品が残されています。


SHODOSHIMA 2018 ©GEORGE ROUSSE

ほとんど化学変化による退色を起こさず「永遠の輝き」を放つ金箔に対し、銅箔は時の流れと共に酸化し色が変化します。チョークの線も擦れば簡単に消えてしまいます。

「無常観」や「儚さ」といった日本特有の美的感覚に共感したルース氏。
その感覚が日本の素材を通して体現されていたことが大変興味深かったです。

このギャラリーを訪れ、独自の価値観と美的感覚を持つアーティストが、異国の素材と触れあうことで柔軟で斬新な美しさが創り出される可能性を実感させられました。
世界各地に赴き、その空間やその土地で育まれた素材の持つ歴史や本質的な価値と真摯に対峙する経験が、ルース氏の審美眼を培ったのではないでしょうか。

また箔押しを施工された日本の職人や制作に携わった多数のボランティアの方々にとっても、海外のアーティストの作品に携わる経験は刺激的だったことでしょう。

至善堂も新たな美しさを追求するアーティストたちにとって魅力的な店舗を目指します。
日本の材料が世界のアーティストの創造性に触れることでどのように可能性が広がるのか。
楽しみながら皆さまと共有していきたいと思います。

 

ギャラリー情報
GEORGES gallery + KOHIRA café
https://www.georges-gallery.com/

アーティスト情報
ジョルジュ・ルース/George Rousse (1947-) フランス,パリ出身
https://www.georgesrousse.com/en/biography/