島田耕園人形工房 インタビュー PartⅡ
【人形がどんな意思を持つかは眉で決まる】
原型を御所人形の表現方法でしっかりと作ること、そして胡粉仕上げが大前提。島田さんの赤子はおよそ四頭身で作られます。
「形づくるときに表情がこうあると考えて作り、焼き上がって胡粉を塗り重ねた後は顔の陰影がはっきりと出ている。その上に筆を置きながら人形の意思の確認をするようなものやね。」
一番緊張するのは目ではなく眉を描く時。また墨の濃さ、その時々で一番合う色があるそうです。「若い頃は作る人形が自分にそっくりだった。でも今はこの人形がどうであってほしいと願い作り、表情も様々。人形を通して表現したいものが表情に現れていることが嬉しい。」と島田さんは語ります。
【伝えたい精神をふきこむ】
「目に見える人形の奥行き」と「心に感じることのできる奥行き」。二つを両立させるところに面白さがある。御殿玩具においても、ただ形を写し作るのではなく、物の歴史や背景、使っていた当時の人たちの生活を知って作る。
細やかな精神性が和様の美意識を込めることであり、本質的な美しさとなる。色や形、仕掛けを実際に受け取る側が感じるように、和様の美意識が伝わることを目指しておられます。
【御所人形が続くため、自ら伝える】
金やプラチナの箔はその本質的美しさを補う材料として、作品の中で効果的に使用されています。福良雀の金色の尾羽をよく見ると金箔と金泥を繊細に使い分けて描かれています。
近年、御所人形を含む伝統工芸品を手に取る人が少なくなる中で、膠や胡粉といった材料の性質の変化や道具の消失が続いています。創作においても試行錯誤しなければいけないという新たな課題に直面されています。御所人形の精神をどう保つか?島田さんはハイエンドブランドの依頼も受ける傍らで講演会やワークショップなどの啓蒙活動に力を入れておられます。
【失敗しない秘訣は楽しむこと】
成型、塗り、絵付け、箔押しなどすべての工程を一人が行う御所人形。彩色の際、下描きをするか?失敗などはしないのか?との問いにこう語られます。
「色の合わせは感覚的なものが必要で悩むけれど、考えながらするのが楽しい。
好きなことは集中するやろ?それが一番大事なことや。集中したら失敗せえへん。」
「体の続くうちは創りつづけたい」と力強くも笑顔で仰っていたのも印象的でした。
【取材後記】
今回のインタビュー中は始終笑顔で「楽しい」という言葉を何度も聞くことができました。島田さんが楽しみながら創作する御所人形は、工房兼店舗、スターバックス二寧坂ヤサカ茶屋店、雑誌「婦人画報」(不定期)などでご覧いただけます。
今年の8月9日”箔の日”には島田耕園さんの「御所人形と御殿玩具の講演」「人形への箔押し」を行います。是非ともご参加ください。