【FILM】職人訪問「金箔瓦の鍾馗さん」ができるまで
金箔の「箔押し職人」と一口に言っても、仕事としている分野によって工房の様子や設備も使う接着剤も様々です。
今回訪問したのは至善堂店舗の瓦屋根に10年以上据えられている「金箔瓦の鍾馗さん」の箔押しをした職人さん。雨にも負けず風にも負けず、剥げたり退色したりしないまま屋根でずっと来たる厄を睨み続けている鍾馗さんは、どんな場所で生まれたのでしょうか。
※「鍾馗(しょうき)さん」とは…元々は中国の道教に伝わる神様で、魔除けとされています。
京都・奈良の町屋の屋根にしばしば見ることができます。
美術館博物館などが集まる瀟洒(しょうしゃ)なエリアの路地を入った場所に、工房としている2階建ての町屋があります。
小物の箔押し職人として成熟した技術と知識を持つこの職人さんは、アイデアマンで様々なプロジェクトに参加して来られました。以前magazineの記事になったインスタレーションの箔押しも担当されました。コミュニケーションを取ることが大好きな方。納品などで訪れるといつも楽しそうにお話をしてくださいます。
至善堂の店舗看板も制作いただき、私どもにとってもお付き合いの長い大切な職人さん。現在はお弟子さんと2人でお仕事をされています。
箔押しを綺麗に仕上げるには下地がとっても重要。瓦のような土で出来た焼き物はそのままでは箔押しのための接着剤が定着しないので、下地をしっかり作る必要があります。
焼き物の凹凸を潰してしまわないように、厚く塗りすぎないように…
簡単に見えて実は一番難しい下地づくり。職人の技術と勘がモノをいいます。箔押液を施してから箔押しのタイミングも重要で、それは金の輝き方までも左右する大切な作業なのです。
また、日光や雨に晒される場所に置かれる物は、上から透明の樹脂を厚く塗って荒天に耐えられるよう仕上げることもできます。でも、金箔独特の細やかで落ち着いた光り方を保つには箔押液も薄く、コートもできるだけ施さないようにしないといけません。
そのさじ加減は経験や日々の試行錯誤や研究によって生み出されます。
職人さんやアーティストの方々を通じて箔の新しい使い方や表現方法を知ることができるのも、長くこの地で箔屋を営んでいる楽しみなのです。