若狭塗のお箸展によせて ①若狭塗とは
京都市役所前に店を構える私たちは、純金箔をはじめ様々な工芸材料を取り扱っています。今回、工芸材料を魅力的な作品を通じてご紹介する企画展を実店舗にて開催します。
第1回目は、福井県小浜市で製作されている「若狭塗のお箸」。
江戸時代から継がれる若狭塗の模様に秘められた歴史や技法。それらは今、工業的に制作されていることが大半です。職人によってすべてを手仕事で作り上げられた若狭塗箸は、職人の高齢化や後継者不足に伴って激減しています。
若狭塗
若狭塗の特徴は、卵の殻や貝殻、松の葉などで模様をつくり、漆を塗り重ねたあと、炭などで研いで模様を出す研ぎ出し技法を用いていることです。漆の塗り込みや艶を出すための磨きなど、30以上の工程があり、漆器のなかでも独特な風格と重厚感を持っています。何層にも重ね作り上げた漆が若狭の海の奥深い透明感を表現しています。
工程:右の木地から左へ漆を塗り重ねていく
歴史
江戸時代初期(1596~1615年)小浜藩の漆塗り職人だった松浦三十郎が若狭湾の美しい海底の様子を図案化。中国から伝わった漆器を参考にして作ったのがはじまりと伝えられています。
江戸中後期にかけては若狭塗の黄金時代で、箔押し研出し技法(青貝・卵殻)、螺鈿以外にも蒔絵の技法も併用され、200種以上にも及ぶ塗手法が完成されていたと言われています。
材料
若狭塗は、卵の殻やアワビ貝、松の葉などの材料で模様をつけます。漆は黒だけでなく、赤や緑などの色のついた漆(色漆)を使用されることが多いです。色漆を塗り重ねた上に金箔や銀箔が巻かれ、さらに漆を薄く塗ることで箔は美しく輝きます。
色彩豊かな漆の堅牢さと貝卵殻の模様は、若狭の浜辺を想い起こさせます。
細かく切断されたアワビ貝
多くの工程と職人の手技を極めた歴史ある若狭塗。日本の風土と日本人の勤勉さが育む工芸品は日本の宝物です。
若狭塗のお箸は数ある工芸品のなかでも日常に取り入れやすいものです。食洗機に入れられない理由、図柄が生まれた背景を知り、私達が積極的に使う。そうすることで工芸は存続することができます。私達にとっても日本の良さを見直す良い機会になると感じました。
↓②では職人さんの工房を訪ね、その思いをお聞きしました。